この世界に私とまったく同じ人間はいるのだろうか。 私はそんなことを考えながら家への道を歩いていた。 私と同じ人間、ドッペルゲンガーのようなそれは・・・確かにいるのだろう。何せ世界には60億もの人がいるのだから。 もし、そのような人がいると言うことはとても恐ろしいことだ。なにせ「私は誰とも違って尊い」という常用句の「誰とも違う」が否定されるわけであるから。 同じような人間であっても周りの環境は違う、確かにそうだ。だが人一人としてみたとき、何もない空間に放り出されたとき、それは同一ではないのか。 考え込んでいると、よく赤信号を見逃しそうになる。 あぶないあぶない、と私は立ち止まる。 しかし、よく考えてみると双子は身近にその追うな存在がいるわけだ。どのような心境なのだろうか。想像もできない。 少なくとも自分にとっては気分のいいものではない。 再び視覚情報に注意を向けると人影が見えた。 瞬間、私の体に電気が走った。 彼こそがそうだ、その人物なのだ、と。 普段の自分なら見逃していたかもしれない、いや、見逃してきたのだろう。 だが、その日の自分は特に注意を払っていた、ゆえに気づいたのだ。 幸い彼は私に気づかなかった。おおよそあの様子だと道の曲がり具合についてでも考えていたのであろう。 彼は視界から消えた。 信号はいつの間にか赤になって青になって赤になった。 だが、その事柄は思ったほど私にダメージを与えなかった。 想像していた時は怖くても、実際起こるとたいしたことはない、というのはよくある話だ。 きっと死ぬときもそうなのだろう。 信号が青になった 私はこの出来事から得た衝撃、感動、喜び、落胆といった諸々の感情を何度もかみ締めながらまた歩き出した。 「そういえばドッペルゲンガーに合うとしばらくして死ぬというのを聞いたことがあるな。 まぁ、彼はドッペルゲンガーではないので大丈夫だろう。」 家について食事をし、ゲームをして風呂にはいたときにはすっかり印象は薄くなった。 明日はどんなことについて考えるのだろうか。そんなことを考えながら私は眠りについた。